冷or温?――ケガのとき、結局どっちが正解?
いつもお世話になっております。
本日は、患者様からとてもよく聞かれる質問についてお話しします。
「痛いところは温めた方がいいですか?
それとも冷やした方がいいですか?」
実はこの質問、答えはひとつではありません。
なぜなら、痛みが出てからの時間や目的によって対処が変わるからです。
今回はその中でも
「痛みが出たとき、冷やした方がいいのか?」
という点に絞って解説します。
「とりあえず冷やす」は本当に正しい?
スポーツ経験のある方を中心に、
「ケガをしたらまず冷やすものだと思っていました」
という声をよく聞きます。
実際、これまで長い間、ケガの応急処置=アイシングという考え方が一般的でした。
しかし近年では、
「ケガ直後=必ず冷やす」ではない
という考え方も広がってきています。
冷やすことで期待できること
患部を冷やす(アイシング)と、
- 痛みを感じにくくなる
- 腫れが一時的に広がりにくくなる
といった効果が期待できます。
そのため、
- ケガ直後で痛みが強いとき
- とにかく今のつらさを和らげたいとき
には、冷やすことが役立つ場面もあります。
ただし「冷やせば早く治る」わけではありません
一方で、最近の研究では、
- 冷やすことで治りが早くなる
- 機能回復が良くなる
といった効果については、はっきりした証拠は多くないことも分かってきました。
また、冷やした直後は
- 力が入りにくくなる
- 動きが鈍くなる
といった影響が出ることもあります。
さらに、ケガのあとに起こる炎症反応は、体が治ろうとするために必要な過程でもあります。
冷やしすぎることで、この回復の流れを妨げてしまう可能性も指摘されています。
なぜ意見が分かれるのか?
冷やすべきかどうかで意見が分かれる理由は、主に目的の違いです。
- 「今の痛みを和らげたい」
→ 冷やすことが役立つ場合がある - 「早く治したい・しっかり動けるようになりたい」
→ 冷やすだけでは不十分なことが多い
つまり、
冷やすこと自体が良い・悪いのではなく、使いどころが大切なのです。
当院の考え方(まとめ)
✔ ケガの直後〜1〜2日以内で
痛みが強い・腫れが気になる場合
→ アイシングは選択肢のひとつ
✔ ただし
- 冷やしすぎない
- 長時間続けない
- 何日も冷やし続けない
✔ 回復を早めたい場合は
安静・固定・圧迫・適切な運動・温めなどを
状態に応じて組み合わせることが大切
「とりあえず冷やしておけば大丈夫」という考え方ではなく、
そのケガに合った対処を選ぶことが早期回復の近道です。
自己判断で迷ったときは、早めにご相談ください。
参考にしたエビデンス・情報ソース(代表例)
本記事の内容は、以下のような国内外の研究・総説を参考にしています。
- 急性のケガに対するアイシングの効果を検討した
システマティックレビュー(2004年) - アイシング後の運動機能への影響をまとめたレビュー(2012年)
- 手術後・ケガ後の冷却効果を分析した
最新のメタ解析(2025年) - 炎症と治癒の関係、アイシングの功罪について解説した
日本および海外の総説論文 - 冷却が筋修復に与える影響を調べた
動物モデルによる基礎研究(国内大学の報告)
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